Hirayaブログ

@fumi_mdのブログです。たまに何かを書くと思います。

親友に出会う瞬間。アニメ「宇宙よりも遠い場所」が感動するのでぜひ見て欲しい。

宇宙よりも遠い場所」というアニメに凄く感動というか心を打たれてしまったんですが、何度も見返してる内に段々と「なんでこんなに胸に響くんだろう」と不思議になってきたので考えてみました。

宇宙よりも遠い場所」のストーリー

宇宙よりも遠い場所」のストーリーを一言で表してしまうと"女子高生達が南極を目指す話"です。"達"という所がポイントで、一人じゃなくて四人で目指すわけですが、南極なんて女子高生が簡単に行けるわけないですよね。ということで仲間と共に南極行きを叶えるため、色々と奔走するのが前半パートかなと思います。

で、実際の本編では一話、二話、三話と仲間が増えていく過程が描かれているんですが、これが凄く感動するんですよ。びっくりするくらいに。

何に感動したか

青春ものっていいですよね。友達と何かをがむしゃらにやってみるとか、退屈な日々を脱するために打ち込める目標を見つけるみたいな。これは脚本を手がける花田先生の代表作「ラブライブ」でも似た部分があると思います。もう少し遡ると「けいおん」とか。日常ものって枠でみられることも多いですけど主人公の唯が高校生になって本当に楽しめることを見つけるお話って側面もありますよね。

ということで「宇宙よりも遠い場所」も同じ感覚で見ていたんですけど、じゃあこの作品の感動ポイントもそこなのか?って問われると、ちょっと違うなと思ったんですよね。

だって本編でも言ってたんですけど、あの子達って友達じゃないんですよ。一緒に遊んだこともないどころか出会ったばかりだし、友達とか親友って言える程、親密な仲ではないんですよね。

じゃあ何に胸を打たれたのかっていうと「親友に出会えた瞬間を見せつけられてる事」なんですよ。

友達になる瞬間

ハチミツとクローバーっていう漫画で「人が恋に落ちる瞬間はじめて見た」っていう場面があるんですけど、たしか人が人に恋する瞬間なんて中々お目にかかれないですよね。それでも一目惚れに限れば結構あると思うんですよ。

じゃあ「友達になった瞬間」は?って言われると恋に落ちる瞬間以上に難しいんじゃないかなって。だって自分の友達で考えてみても、どの瞬間友達になったの?って言われるとはっきりいって分からないですよね。

宇宙よりも遠い場所」で感動する場面ってまさにその瞬間を描いているんですよ。

いきなり告白

三話のラスト、結月が扉を開くと三人が立っている場面。あのシーンを見て視聴者は思うんです「ああ、友達ができたんだ」って。なぜって、あの瞬間にもうラストまで見えてるんですよ、きっと色んな事をやり遂げて最後には掛替えのない親友になってるんだろうなって。

一話もそうです、主人公のマリが南極に行きたいって夢を持つ報瀬に「手伝えることはないか?」って聞くんですけど、報瀬は「一緒に行こう」って答える。これって、もう親密になるあらゆる段階をすっ飛ばしていきなり愛の告白をしてるみたいなものですよね。一緒に南極に行くなんて夢を共有したら友達どころが親友になるに決まってるじゃないですか。あそこは「まずはお付き合いから」って申し出てる相手にいきなり「結婚しよう」って告白してる場面だと思うんですよ。

一緒に走る仲間

二話も同じなんです、出会ったばかりの日向がマリや報瀬と一緒に三人で追っ手から逃げる場面。あそこも三人で走ってるから感動するんですよ。いくら青春っぽく走ってても一人だったら胸に響くものはない気がします、三人だからなんですよ、一緒に走る仲間がいるからこそ!

だってよく考えると別に日向は逃げる必要ないんですよ。捕まったところで実際殆ど何も知らないわけだし、ホントにさっき出会ったばかりなんだから。これは主人公のマリだってそうです。でも足を並べて走るんですよね、報瀬の「逃げて!」を合図に。

あの三人、特に日向はあの瞬間、本当の意味で二人の友達になったんですよ。南極に行くっていう報瀬の夢を共有して、一緒に息が切れるまで走って。

その、人と人が結ばれる、親友になる瞬間を見せられて感動してるんだなって。

梅干しと感動

いわば三国志の桃園の誓いみたいなものですよね。「死する日は同じ」じゃないけど、この先きっとあの三人は一人が走ったら他の二人も走るんですよ、決して一人だけを行かせたり置いていったりはしない、あの瞬間にそういう契を結んでるんですよ。言語化は上手く出来なくても、視聴者もみんな心でそれを理解してるから、あの疾走で感動するんです。馬鹿みたいに笑いながら一緒に全力疾走出来る友達を見つけた瞬間なんですよ。

こういう場面に感動するのって梅干しを見たら口に含まなくても唾液出るのと同じだと思うんです。提示された情報からある程度、結末が見えてる。梅干しの味を知っていればいる程、感動の幅も大きくなる。

絶対親友になる券

それで、もう一度三話に戻るんですけど、この最新話が一番そういう構図がわかりやすくなってるんですよね。今まで友達がいなかった結月に友達が出来る。別に「友達になろう!」とか「ズッ友だよ!」とかいう言葉は交わしてない。言葉でいくら友達とか仲間とかいったって疎遠になってしまうことは視聴者も経験で分かってる、誰でも知ってますから。

でも結月はそうじゃない。"絶対親友になる券"を貰ったんですよ、あの瞬間に。そこに視聴者は心を揺さぶられるんです。「ああ、この四人は絶対に親友になるな」って、自分の人生やら何やらと照らし合わせて分かってるんですよね。だって一緒に南極に行くんですから。

誰かの夢

この一二三話の友達になる瞬間の描写は演出的にも素晴らしく、それぞれ挿入歌が流れるんです。一話と三話はsayaという方の"ハルカトオク"っていう曲で、サビは「大きな夢を叶えたくて遥か遠く遠く」って歌詞なんですけど、この"夢"、大きな夢って報瀬の夢なんですよね。他の三人にとっては別に自分の夢じゃないんですよ。

他の三人は決して自分のやりたい事を見つけたわけじゃない、この人とだったら一緒に走りたいって思える友達を見つけたんですよ。

実際に大人になると夢が同じで気心もしれて一緒に遊びも仕事も出来るような仲間に出会うなんて中々難しいですよね。ワンピースでルフィがゾロやサンジ、ウソップと出会えたのは奇跡みたいなものですよ。だってある目的を達成したら、それが同時に全員の夢を達成することにも繋がってるんですから。

宇宙よりも遠い場所」はそうじゃないんですよね。あくまで南極に行くっていうのは報瀬の夢なんです。他の三人はそこに乗っかってるだけ。でもそれが逆に良いんですよ。他人の夢に自分の情熱やリソースを無邪気に仮託出来るのは青春の特権だと思うんです。いや、もしかしたら若い頃であってもそれが出来る人は少ないのかもしれません。

終わり

そういう身近なようで簡単には出来ないことをやっている登場人物達、彼女たちが友達になっていく過程、その道筋が一番凝縮された部分が一二三話のラストであって、そこに心を揺さぶられたんだなと。長くなりましたけど、そう思いました。

ということで「宇宙よりも遠い場所」、もしまだ未視聴の方がいたらぜひ見てほしいなと思いました。

四話以降も楽しみです。