Hirayaブログ

@fumi_mdのブログです。たまに何かを書くと思います。

完全無料!タダで個人開発アプリを中国語にローカライズ(高品質)する方法

 

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前回、ゲーム・モバイルアプリ開発者の方向けに記事を書きました。その続きです。

アプリ無償ローカライズの依頼フォームが出来たらしいので、お知らせします。

こちら : 中国語ローカライズのご提案_扑家汉化平台_扑家汉化组_扑家吧

前回の記事を読んでいないので意味が分からないという方はこの記事だけでも読んで頂ければ大体分かると思います。

前回Pujia8スタジオについて書きました

前回の記事でPujia8スタジオという中国の翻訳グループ(企業)から無償ローカライズの提案があったことを書きました。

少し長いですがこの記事です。

Pujia8スタジオというグループが日本のゲームアプリを無償で中国語に翻訳、中国のAndroidストアで配信するお手伝いをしてくれるというお話です。

そして、近く「開発者側から無償翻訳を依頼するためのフォームを作る予定らしい」と記事に書きました。

ローカライズ依頼フォームが公開されました

その依頼フォームが完成し公開されたようです。

このフォームから依頼すれば自作ゲームを完全無料で中国語にローカライズしてくれます。

中国語ローカライズのご提案_扑家汉化平台_扑家汉化组_扑家吧

ページを見てみれば分かると思いますが、Q&Aや必要な書類のテンプレートなども記載されています。

実はこのQ&Aや必要書類のテンプレートは僕とのメールでのやり取り(質問+回答)や改善した方が良いと思う点として僕が挙げた箇所が割とそのまま反映されています(Pujia8スタジオから「使いたいけど良いですか?」と聞かれたので「良いですよ」と答えました)

ですので、そのやり取りをした本人として少し補足してみたいと思います。

変更点

同意書について

一番大きな変更点は、僕の時には「授権書」という書類が必要だったものが依頼フォームでは「同意書」に変わっている点です。中身の文章もかなり変わっています。

授権書の時はどんな条件で代理配信の独占権を与えるのかよく分かりませんでしたし、損害の責任についての文言も少し怖いものでした。同意書ではその点が分かりやすくなっています。

更に用意されている同意書はあくまでテンプレートなので、可能なら開発者側でオリジナルの同意書を制作しても構わないようです。但しその際も代理配信の独占権とゲームがオリジナルであることを証明する文言は入れなければならないと思います。ですから結局似たような同意書が必要になるでしょう。

僕の時の授権書には中国語verと日本語verの2枚がありました。同意書ではそれもなくなり日本語のみになっています。これは「中国語verには何が書いてあるか分からないし、どちらを正文にするかも書いていないので怖い」と言った所、なら中国語はいらないかとなったようです。

Q&Aについて

おそらく大体の疑問は網羅出来ているのではないかと思います。

具体的なリリース方法や配信ストアに関する部分だけないのは、僕自身がまだリリースまで辿り着いていないからです。リリースまでこぎ着けた際は、またこのブログで書きたいと思います。

前回のブログでも少し書いた翻訳精度についてですが、おそらくゲーム分野に関しては業界トップレベルの品質だと思います。これはPujia8スタジオではなく中国の一般ユーザーの方に聞きました。公式の翻訳よりも質が高いことも珍しくない、というよりもそれが普通だとのことでした。

他に、ローカライズする基準ですが、このQ&Aには書かれていないものの、これはある程度早い者勝ちだと思います。どうしても無償で中国語化して欲しいという方は早めに依頼されると良いかもしれません。

どれくらいのDLが見込めるか

依頼フォームのページに「いままでに開発者様と協力しローカライズしたゲーム」という項があります。記載されている作品がこれまでPujia8スタジオが許可を得てローカライズした作品です。

そこからTAPTAPというページに飛べば分かりますが2作品は20万DL程されています。面白いゲームであれば個人アプリでも直ぐにこれくらいはDLされるとのことでした。

収益は?

分かりません。僕のアプリが無事リリースされた暁にはそのあたりも書きたいと思っています。

(追記)簡単にですが書きました。 

終わりに

もしかしたらいきなり中国の人とやりとりするのは怖い!であったり、ここがよく分からない!という声があるかもしれません。

そういった方は僕のtwitter(@fumi_md)にDM頂ければ知っている範囲でなんでも答えますので気軽にご質問下さい。

今回出てきたTAPTAPと中国のストア事情についてはまた次の記事で書きたいと思います。

最後に、前回の記事でも書きましたが僕はPujia8スタジオの人間ではなく、あくまでただの個人開発者です。Pujia8スタジオにローカライズを依頼しようという方はキチンとご自分で考え、行動して頂くようお願いします。

 

 

 

 

 

 

中国の元非合法翻訳グループからアプリローカライズのお誘いが来た話

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先日アプリをリリースした所、Pujia8スタジオという中国の翻訳グループから「アプリを中国語に無償でローカライズしたいがどうか」とのお誘いがありました。今回はその経緯をまとめてみます。

結論

結論(まとめ)だけ先に書いてしまいます。
ローカライズのお誘いメールを送ってきたのはPujia8スタジオというグループです。
このグループは元々日本のゲームを勝手に中国語に翻訳する非合法集団だったのですが
現在は日本の大手ゲーム会社の翻訳案件なども手がける合法的な企業に生まれ変わっているようです。
そこで僕も制作したアプリのローカライズをお願いすることにしました。

以下、ことの経緯をメインになぜ非合法活動をしていたグループが合法的な企業に生まれ変わったのか、急成長する中国のAndroidアプリストア市場や中国での著作権意識の移り変わりなども書いていきたいと思います。

メールが来るまでの経緯

ゲームを作りました

先日「7年後で待ってる」というゲームアプリをリリースしました。

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7年後で待ってる(iOS)

7年後で待ってる(Android)
最初はあまりパッとしたDL数でもなかったのですが、GooglePlay内で急上昇アプリとして紹介されたことから多くの人に遊んで頂けたようです。お陰様で総合ゲームランキングにも載ることが出来ました。
これは僕にとっては予想外の出来事だったので本当に嬉しかったのですが、そんなある日メールが届きました。
総合ランキングにアプリが載ると企業の目にも付きやすくなります。アドネットワークのお誘いメールがきたり、なんだかグレーな匂いのする海外からのブースト施策のお誘いメールや、ロシアからのまったく読めないメールが来たりします。

そんな風に色々なメールが来ていたので、最初はまたそういった勧誘の類だと思っていたのですが違いました。

変なメールが届いた

件名は「中国語版ローカライズの許可のお願い」送り主は「Pujia8スタジオ」

内容は「私たちはあなたのゲームを愛しているので(原文ママ)ローカライズさせてほしい」というものでした。

Pujia8スタジオって何だ?

調べてみました

当然ながらまずは「Pujia8スタジオ」で検索します。

すると一番上に出てくるのが以下の記事です。というかこの記事以外には一切情報はありません。

簡単に要約してしまうと、とある日本のゲームアプリが無許可で中国語化されているのを発見した。調べてみたら内部の広告まで書き換えられていた、という話です。 

アプリが勝手に中国語化されてリリースされていると聞いて調べてみたら、想像以上にやばかった – tomeapp 

非道い話ですね。

Pujia8スタジオを一言で表すなら「日本のアプリを勝手に翻訳して儲けてる集団」といった感じでしょうか、最大限好意的に解釈すればファンサブ活動ともとれますが、いずれにせよ非合法集団であることに変わりはありません。

断ろうと思った

上記の記事を読んだ時点では断る気満々でした、得体がしれないというか恐いですし。

但し、直ぐには断りませんでした。

なぜか?メールの提案が魅力的だったからです。

メールにはこう書かれていました。

私共は無償でゲームの翻訳をさせて頂きます。中国語版のスタッフリストに私共の名前を載せるだけでいいです。ゲームの収益や売上などは全てそのままhiraya-space様のものとなります。配当金なども頂きません。

はい。つまりお金の魔力に負けました。

そもそもなぜ許可を取るんだろう?

上記の記事によれば、Pujia8スタジオは無許可で日本のアプリを中国語化している集団です。しかし、そうであるなら僕に許可をとる必要はありません。

ということで、もう直球で「"Pujia8"で日本語検索をすると"日本のアプリを勝手に中国語化して配信しているサイト"と出てくるんですけど、これは事実ですか?」と聞いてみました。

Pujia8スタジオとメールのやり取りをしてみた

信用出来る?

上記の質問を送ってみた所、こう返ってきました

申し訳ありませんが、こちらは事実になります。今までの行いについて、重ねて謝罪いたします。
全ては私たちの著作権・コピーライトへの意識の低さが招いた過ちです。
ご存知かもしれませんが、しばらく前まで、中国での著作権・コピーライトなどの意識は極めて低かったです。私たちも、中国版を作るのに許可を取る必要があるとはそもそも思ってもいませんでした。今では自分の行いの愚かさに恥じています。今ではかならず許可を取って、中国版を作るようにしています。ゲームの内容も、中国語への翻訳を除き、一切の改変をしないと保証いたします。
重ね重ね申し訳ありませんでした。もう二度とそんな過ちを繰り返さないと誓います。
どうか私たちにもう一度チャンスをください。

皆さんどうでしょう?信用出来ますか?

正直僕は、最初よりは少し印象が良くなったとはいえ信用出来るとまでは言い切れませんでした。なぜか?

一緒に来た契約書がメチャクチャ怪しかったんですよ!

契約書の内容

契約書は前段と後段に分かれていました。前段にはPujia8スタジオに代理配信の許可を与える旨、そして後段にはこう書かれています。

また、甲は当ゲームの著作権を完全保有することと第三者の合法的な権利を侵害しないことを保証する。甲は上述内容の真実と合法性を保証する。当ゲームの著作権問題で引き起こした経済および法律的な責任はすべて甲が引き受けるものとする。

めっちゃ恐いです!

甲とは僕のことです。僕は最初にこれを読んだ時思いました。きっと今、詐欺の入り口に立っているんだ、と。

まあさらっと流してしまいますが、この文面は問題のあるものではありませんでした。よくよく読めば分かりますが、自分の作ったゲームアプリがキチンとオリジナルであること、そしてもしパクリであったらその時の責任は全て自分で取れよと言っているだけです。

むしろ本当に問題だったのは前段です。無償ローカライズという話だったのに、Pujia8スタジオに中国配信の代理権を与え、しかも契約方式が独占であると書かれていたのです。

何か隠している気がする

最初のメールにも一応ローカライズした暁にはPujia8スタジオの運営するサイトで配信したいとは書かれていました。しかし独占云々についての記載はまったくありません。

条件を小出しにするのって信用出来ないですよね。何より前科があるわけですから。

僕はこの時点ではPujia8スタジオとその中の人を、権謀術数に長け、ITに精通し、法律の抜け穴を使い富を集める手練のマフィアみたいなイメージでいました。

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なのでもう「これは騙すか騙されるかの世界」「絶対に僕は騙されないぞ!」くらいに考えていました。

ですが、本当に無償でローカライズして貰え、収益を全ていただけるのならそれはそれは嬉しい話です。

なんとしてもお金がほしい!お金の魔力には勝てない!というかお金がなくてやばい!

ということでまたしばらく悩んだ挙句、僕はもう気になったことを全て直接聞いてみる事にしました。

ちょっと恐かった

もうとにかく質問攻めにしました。

業務中にこんなメールが来たらブチ切れるっていうくらい沢山質問しました。しかもそれまで、疑っているなんて態度はおくびにも出さず非常に丁寧なやり取りをしていたのですが(最初の無断ローカライズは本当ですかという質問は除く)

それが、いきなり人が変わったように根掘り葉掘り質問をしてしまったので相手が怒り出さないか結構ビビっていました。

結果どうなったかというと。

アプリ内の広告を書き換えていた件について

平謝りでした。一部引用します。

Q.日本の記事には無断でローカライズしていた頃は翻訳だけでなく、アプリ内部の広告も自社のものに書き換えていたとありますが、事実でしょうか?
A.申し上げありませんが、それは事実になります。当初ネット上の集まりでしかない私たちは、プラットフォームの維持にお金が必要でした。それで広告を書き換えるなどしたんです。
開発者の皆様に重ねて謝罪いたします。申し訳ありませんでした。

しかし、どうしてそんなことをしたんでしょうか?

ここから僕がPujia8スタジオに聞いた話を掻い摘んで説明したいと思います。

ホントは全文載せたいくらいですが質問数があまりに多く、回答もとにかく長い上に受け答えに重複している部分も多いので要約します。

Pujia8スタジオと中国のゲームファンサブ

Pujia8スタジオの始まり

中国では2000年から「ゲーム機禁制令」という法律が施行されています。これは読んで字の如くそのままの意味です。ゲーム機を禁止する法律ですね。

今では少し緩和されましたが、00年代の中国ではゲーム機(PSやxbox,Wiiなど)は禁止されていたのです。なので一般の人たちはゲーム機を買うことが出来ませんでした。

但しどこにでも抜け道はありますし、好事家、オタク的な人はいます。そういった人たちは当局の目を盗み、香港経由などでソニーや任天堂のゲーム機を手に入れていました。

しかし、ここで一つ問題があります。ゲーム機が禁止されているのだから当然ソフトも売っていません。

折角ゲーム機を手に入れても遊ぶソフトがないわけです。ソフトも裏ルートで買えば良いという発想もありますが、ゲーム機に比べソフトは種類も多く一々全てのソフトを買ってくるというのは少々現実的ではありません。当時の中国は著作権意識もまだ低く、当然の成り行きとして中国のゲーマーたちはソフトをネット経由で手に入れようとしました。

さてソフトをネットからDLしました。しかしゲームの多くは日本語や英語です、このままでは遊べません。ここで翻訳集団が出てきます。

折しも00年代は子供の頃、日本のアニメで育った世代がネットの中心となっていました。web上には日本語の達者な中国人が沢山います。そういった人たちの一部がアニメの翻訳を手がけるファンサブ集団となり、また一部がゲームの翻訳を手がけるグループとなっていきました。

そうして沢山の日→中ゲーム翻訳集団が生まれるわけですが、その中の一つがPujia8スタジオでした。

そこそこ成功した

どこの世界にも競争はあります。

Pujia8スタジオは翻訳集団の中ではそこそこ有名になれました。何故かと言うと翻訳の質が高かったからです。

当時の翻訳集団の中には日本語の漢字だけを見て雰囲気でテキトーに翻訳をでっち上げてしまうエセ翻訳家グループも沢山いました。そうした人たちを中国語で「塞式翻译」と言います。ユーザーもおかしいなとは思いつつ、日本語が分からないので仕方なくデタラメ翻訳のゲームをプレイしたりしていました。

そうした状況であれば正確な翻訳を続けるPujia8スタジオの人気と知名度が上がっていくのも頷けるでしょう。当然ながら人気が出ると人も集まってきます。人が集まると場所が出来ます。そうして出来た場所、それが現在のPujia8スタジオのwebサイトでした。

しかし、ここで一つ問題がおきます。Pujia8スタジオは金儲けが下手だったのです。

まあ簡単な話で元が日本のゲーム好きがこうじて日本語まで憶えてしまった人たちが集まって出来ただけの集団です。もう明らかにお金儲け下手そうですよね。だってそもそもがただのゲーム愛好家ですから。ゲームの翻訳をする内にユーザーも沢山集まってきて自分たちのwebサイトを作ったまでは良かったものの、そのサイトを維持するだけのお金はありませんでした。

そうして無断で広告を書き換えたり、その他諸々の悪事に手を染めることになります。但し、それ自体が悪いことであるという意識は殆どありませんでした。

その後、Pujia8スタジオは自慢の翻訳家集団を纏めて引き抜かれかけたり(実質数ヶ月引き抜かれた)潰れそうになりながら、時は流れて行きました。

時代が変わった

ちょうどVitaが発売された頃(中国での発売は2015年3月)大きな事件がありました。当局が「ゲーム機禁制令」を緩和したのです。

これによってそれまでの潮目が大きく変わりました。中国でも著作権意識が高まり、それまで普通の事であった違法DLが逆に通報されるようになったりしました。

ゲームは買うものという認識が人口に膾炙し、Steamでは中国ユーザーが急増、今や売上はアメリカに次ぐ2位にまでなりました。

Pujia8スタジオの周辺でもその影響は様々な形で表れました。2015年から2017年といえば数字にしてしまえばたった2年ですが、それは大きな変化でした。

そして、この流れを見ていたPujia8スタジオは自分たちも変わらなくてはいけないと決意します。

元々、Pujia8スタジオは合法的な翻訳業務で収益をあげる企業にいつかなりたいと考えていましたから、この規制緩和と世間の変化は渡りに船でもありました。

会社化する

まず、日本の大手ゲーム会社から有償翻訳の案件を獲得するためPujia8スタジオを会社化しました。

実際にはそれまでも名前は出せないもののビッグタイトルの翻訳に関わっていたらしいですが、とにかく会社化することでそれまでの非合法的な活動ではなく合法的な企業としてゲーム産業に関わっていくと決めました。それが今年の1月のことです。

そしてこれまでの無断ローカライズを止め、制作者に許可を取るようになったのも同じ月のことでした。

該当部分をメールから一部引用します。

当時は「※※※(注:ゲーム名)」というゲームがリリースされていて、私個人がとても気に入りました。開発者さんに連絡したところ、まさか許可をいただけるとは思ってなくて、びっくりしました。そして嬉しくなりました。それで許可を取るのに自信が付きました。

しかし全てが上手くいったわけではありません。というかむしろ全然上手くいきませんでした。最初の合法ローカライズから数ヶ月、Pujia8スタジオでは開発者数十人にメールを送ってみたものの、殆ど返信はなかったそうです。更に返信があっても半数はお断りメールであったとか。

まあ当然ですよね、だってググったら1秒後に出て来る画面がこれですから。しかも全て事実ですし。

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そして8月に入りAndroidランキングに載っていた僕のアプリを見てメールを送った所からこのブログの冒頭につながるわけです。

この話は本当か?

概ね事実だと思います。

当然嘘でないという保証もありませんが僕個人は信じました。

理由はいくつかあるのですが、一番大きなものは合法企業化した際にそれまでの団体名であるPujia8という名称を捨てていないということです。もしも本当に悪の組織のようなものであったならわざわざ名称を引き継いだりはしないででしょう。

Pujia8スタジオの人々は本当に自分たちの事を悪い組織だとは思っていない、つまり過去についても偽る必要がないと考えている、と僕は考えました。そもそも僕へのメールでまで過去を偽るのなら、名称も経歴も何もかもあたらしくしてしまった方が早いですから。

僕はメールのやり取りをする内、マフィア的だった中の人のイメージが少しずつちょっと抜けたギーク的なイメージへ変わっていきました。

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説明しきれなかったこと

書き切れなかった事が沢山あるので少し書き足していきます。

代理権、独占契約とはどういうことなのか

代理権

当記事を読んでいる読者の方はご存知かも知れませんが中国ではGooglePlayが規制されています。

ですから中国でAndroid版アプリをリリースしようと思った場合、乱立するAndroid系のストア一つ一つに自ら申請していかなければなりません。はっきり言って日本人の個人開発者がこれをやるのは無理です。というか一つでも無理だと思います。

更にテンセントなど最大手では政府の許可番号まで必要だそうです。もう出来る気がしないというよりやる気がおきませんね。

そこでPujia8スタジオは各ストアへの申請を代行してくれるそうです。それでもテンセントなど大手への申請は難しいそうですが、そもそもそういった大手ストアには個人開発ゲームは殆どないとか。代理権契約が必要になるのはこれが理由です。

独占権

次に独占契約ですが、これは削除申請を通りやすくするためだそうです。

中国では雨後の竹の子並にAndroidストアが乱立しています。著作権意識もまだ低いですからローカライズしたゲームは高い確率で転載されます。更に多くの場合そういったストアでは内部の広告も書き換えているそうです(Pujia8も昔はそうでした)

そういったサイトに対して法的根拠を持って「中国国内ではうち独占だからおたくのストアにあるのはおかしい!削除して下さい!」と言うために必要なので独占契約とのことでした。独占でない場合にも削除申請自体は出来ますが、相手から「許可は取っています」と言われた時の確認の面倒くささが、独占の場合の比ではないことは理解出来ると思います。

つまる所、代理権契約も独占契約も個人開発者のためだということですね。僕は最初これがまったく信じられなくて繰り返し繰り返し聞きました。しかし概ねこれが事実のようです。

ちなみに独占契約は3年間(僕の場合ですが)です。永遠ではありません。しかも独占はあくまで中国語のAndroid版に限った話でIOS版や日本語版については自由に管理して大丈夫ですし、極端な話、Windows用のPCソフトとしてゲームを出したくなったら自由に、翻訳したファイルを使って中国語版を出して下さいとのことでした。

個人開発者にとっては魅力的な提案だけどPujia8スタジオには何の利益があるの?

僕はメールのやり取りをしている間、ずっと腑に落ちないことがありました。

というのも無償ローカライズをしてPujia8スタジオに何の利益があるか分からなかったからです。

前段でも書いた通り契約によって生じる不都合は開発者側には殆どありません。

加えて僕のアプリは結構な文章量があります、これを普通に日中翻訳して貰おうとプロに依頼すれば、おそらく百万近いお金を払わなくてはいけません。代理配信を依頼するための料金もかかります。しかしPujia8は全て無償です。

別にPujia8の翻訳精度が低いというわけではありません、Pujia8は既に述べた通り非合法とはいえ様々な実績がありますし、名前は出せないもののその時代から合法案件にも色々関わってきたそうです。会社化してからもDMMの刀剣乱舞やスクエニの案件に関わっているとのことでした。つまり普通にプロです。

このコストとリターンのギャップが何か隠しているんじゃないかと疑いをもってしまう要因の一つでもあったと思います。

回答

これについても一応聞いてみた所、答えはこうでした。

「小さな案件でも良いから合法的な翻訳で実績を積み上げビッグタイトルの案件を取りにいきたいから」

更に加えて「個人開発のゲームは(制作者が)儲からないから、少しでもお手伝いしたい」「個人開発ゲームは翻訳する部分も少なく、小さな手間で出来るので翻訳家を遊ばせるくらいなら全然構わない」とのことでした。

ここだけ聞くとちょっと怪しく感じるのですが、Pujia8スタジオというグループの成り立ちを考えると、僕はこの受け答えにとてもしっくり来ました。そして同時にまた倒産しそうになるんじゃないかと心配になりました(1月に会社化したばかりなのにもう2回程倒産しかけたらしいです)

つまりPujia8スタジオってゲーム好きの集まりなんですよね、これを聞いた辺りから僕はPujia8スタジオのことをそれほど悪く思わないようになってきました。

もちろん広告書き換えの件などはいけないと思いますが。

ちょっと打ち解けたので色々本音で聞いてみた

ホントに合法化したのか

まずPujia8スタジオが本当に合法化したのかが気になったので、グレーな部分は一切なくなったの?と聞いてみました。

答えは半分NO。依然グレーな部分は残っているらしいです。

僕も中国語は分からないなりにPujia8スタジオのサイトをチェックしてみました。すると、GooglePlayで配信している無料アプリのapkが普通にDL出来る状態になっています。広告を含め内部の書き換えはしていないようですがちょっと問題がある気がします。

これについて伺ってみた所、中国の現在の法体系ではOK(ただしグレー)だそうです。しかしグレーですから最大手の配信サイトはそういうことをしていません(但し最大手ではない大手合法サイトなどはやっています)

Pujia8スタジオでも近い将来最大手のサイトのように完全に白だと言える状態にしたいと言っていました。但し今それをすると多分倒産する、とも。

悪いことだと気付いていたのか

Pujia8スタジオでは主に、家庭用ゲーム機のソフトの海賊版言語パックを配布したり、無料アプリの中国語ローカライズを行ったりしていたそうです。これについて本当に違法性を認識していなかったのかと聞いてみた所、意外な答えが返ってきました。

まず、言語パック配布と無料アプリの無断ローカライズですが、これについては本当に悪いことだとは思っていなかったそうです。確かに公式にサポートされていない地域での言語パックについては、なんとも言えないような気もします。

但し、違法性については明確に認識していたそうです。

どういうことか?

つまりここでいう違法性とは中国当局に対する違法性です。中国ではゲームが禁止されていましたが、Pujia8スタジオはそれを承知で中国のゲーム好きのために言語パックを翻訳・配布していました。いつ当局に目をつけられてもおかしくない状況だったというわけです。そうした意味で違法性は認識していたとのことでした。

次に広告書き換えの件ですが、これについてはやはり多少悪いことだと分かっていたようです。但し、その行いによって制作者の取り分が減るとは考えておらず、その認識のずれが過ちを犯してしまう原因となったようです。

どういうことかというと「代理権」の項でも書いたのですが、中国ではGooglePlayが規制されています。そのため多くのゲームアプリはそもそも中国では流通していません。つまりそもそも市場に正規品がないのだから海賊版とはバッティングしないし、奪うような利潤もないだろうという論理です。

もちろん今では明確に誤りを認め、反省しています。更にあまり詳しくは聞けませんでしたがこの件については既に社会的、金銭的な制裁も受けているようでした。

契約書は後で良かった

僕が何度もやり取りして確認した契約書ですが、本来契約書は後からの提出でもよかったらしいです。

事実、翻訳より先に契約書を受けとることになったのは僕が初めてだとか。

そんなやり方で後から「契約書はやっぱり交わさない」と言われたらどうするの?と聞いてみた所、その時は翻訳した文章が全て水の泡になると言っていました。実際水の泡になったことは1度ではないとか。倒産する気がします。

そんなこんなで結局ローカライズを依頼した

ここまで来て結局ローカライズは断りました。と言ったら皆さんビックリすると思いますが、そんなことは当然なく、ローカライズを依頼しました。

結果はまだ分かりません。ローカライズがキチンと出来ましたら、twitterやブログにてお伝えしようと思っています。

なぜこの記事を書いたのか

他の個人開発者さんが二度手間とならないためです。

Pujia8スタジオはこれからも個人開発アプリのローカライズをしていくそうです。つまり今後も僕と同じようなメールのやり取りが何度も発生する可能性があります。それはPujia8スタジオにとっても個人開発者にとっても益のないことだと思います。

ですから僕が知ったことについては書いておきたいと思いました。もちろん自分で聞くことも大事なので今後Pujia8スタジオと取引する開発者さんはキチンとご自分で判断して下さい。

あともう一つ理由があったとすれば、つい軽い気持ちでメールの返信に「他の開発者のためにもなるし、この経緯をブログに綴っても良いですか?」と書いた所「そんな事を言ってくれた開発者さんは貴方がはじめてだ。とてもうれしい。ぜひ書いて下さい」と言われたからです。

日本語で検索すると悪評しか出てこないわけですから、おそらくPujia8スタジオも困っていたのでしょう。まあ身から出た錆なので仕方ないですが。しかし、僕はその時はまだtwitterもブログもやっていませんでした。軽い気持ちで何かを言うものではないです。

更にこれも書いておきますが、この記事では忖度することなく僕の思ったことややり取りについて偽りなく書いています。なのでもしかしたらPujia8スタジオの方が思っていた内容とは違うかもしれませんし、このブログを読んだら怒るかもしません。

ちなみに僕はPujia8スタジオが合法的に成功すること(と個人開発者)を応援しているつもりでこの記事を書いています。

メールや契約文章の引用部分についてはキチンと公開する許可を得ています。

ローカライズの逆オファーも受け付けているらしい

Pujia8スタジオに「中国ローカライズは個人開発者にとっては利益のあることなので、おそらく開発者側から依頼したいという人もいると思います。逆オファーを受け付けていたりはしませんか?」と聞いてみた所、常時絶賛受け付けているのででどんどん依頼してほしいとのことでした。

最初は依頼はメールでというは話だったのですが、結局メールはやめて依頼フォームを作るそうです。

もちろん全てのゲームをローカライズしてくれるわけではないと思います、リソースにも限りがあるので。

しかし興味のある開発者さんは依頼してみると良いのではないでしょうか。

あなたのゲームを中国語に無償翻訳してくれます

無償ローカライズの対象は個人開発者+独立系の会社、アプリにソーシャル要素が含まれていないものとのことでした。

ソーシャル要素というとカジュアル系でプチソーシャル機能がついてるみたいなものはどうなるのか?とかそういった事は僕にも分かりませんので迷った時はとりあえず依頼してみたら良いと思います。

依頼フォームについては公開次第URLを教えてくれるとのことでしたので、URLが分かったらこのブログかtwitterでつぶやくと思います。

(追記)書きました。

終わりに

こんなに長くなると思いませんでした。最初に書くと宣言していた「急成長する中国のAndroidアプリストア市場」について全然書けていない気がします。

もしかしたらまた続きを書くかもしれません。

最後に一応書いておきますが、この記事はあくまで僕の個人的な経験と主観に基いて書かれたものです。当記事を読んで何か損害を被ったとしても僕は取れる範囲でしか責任を取れません(当たり前ですが)キチンとご自分で判断して行動してください。

と、書いてみたものの前段でも述べた通り僕はPujia8スタジオさんのことを合法的な活動を行う限りは基本的に応援しています。クランチロールのように非合法な存在から有名な企業になった例もありますし、頑張って欲しいと思います。

 

これから個人でゲームアプリを作ろうと思っている人へ伝えたいこと

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先日「7年後で待ってる」というゲームアプリをリリースしました。

7年後で待ってる(iOS)

7年後で待ってる(Android)

その宣伝もかねて、ブログをはじめたら一度はこういう記事を書いてみたかったので少しチャレンジしてみようと思います。

ちなみにタイトルの「これから個人でゲームアプリを作ろうと思っている人」とは「1年半前の自分」のことです、つまりタイトルを言い換えると「昔の自分に伝えたい事」ですね。

プログラミング未経験でも作れる?

作れます。

僕は別に昔を知っているわけではありませんが、今はとても簡単にゲームを作れる時代になりました。事実、僕もプログラミングは未経験です。*1 「サンプル数1で偉そうなことを言うな」というお叱りもありそうですが、実際のところ全くの未経験からゲーム作ったという個人開発者さんは結構います。

プログラミングを全くした事のない人のイメージでは、ゲームプログラミングというと最も難しい部類のプログラミングみたいな考えがあるかもしれませんが、そんなことはありません。

どんな方法でもいいから思った通りに動けばいいというレベルのプログラミングなら年齢、性別、職種に関わらず割と簡単に出来てしまうものです、そして個人制作レベルのゲームならそれくらいのレベルのプログラミングで十分です。

出来上がったものは効率性、メンテナンス性ともにほぼゼロと言ったシロモノになりますが、そこは気にしないようにしましょう。

どうせ個人制作ゲームなんてそうそうアップデートなんてしませんし、もしバグや思いがけない人気でアップデートの必要が出てきても、そこは勝手知ったる我が家です、なにせ全てが手作りのDIYですから他人にとっては地獄の池でも自分にとっては見慣れた庭みたいなものです、保守性の低さは気合と根性でカバーしましょう。

それに、何度か作っている内、下手は下手なりに段々とスキルが上がってくるものです、最初は見えない部分の作り込みなんかよりも、モチベーションの維持と完成させることが何より重要です。

必要なスキルは?

検索スキルです。

分からないことや、ここはもうちょっと良いやり方がありそうだなと思ったら、取敢えず検索しましょう。その内、自分はコードを書いているのかネット上のコードを収集してモザイク画を描いているだけなのか分からなくなって来ますが、気にしません。

いつか絶対にコピペだけでは自分の思ったものが実現出来ず、モザイク画に自分の描いた線を入れたくなるときが来ます、その時は素直に沢山悩んで、試行錯誤しながらコードを書いてみましょう、それを続けている内に段々とスキルがあがってきます。

逆に言えばモザイク画、つまりコードのコピペだけで済ませられるならそれが一番だということです、最初は町一番のモザイク画職人を目指しましょう。

ちなみにコードにもキチンと著作権はあります、そこは注意しましょう。

でも少しはプログラミングの勉強してから作り始めた方が良いよね?

これは半分イエスです。

変数だとか配列だとか関数だとかプログラミングの初歩の初歩くらいは一応ネットで調べてみてからの方が良いかもしれません。

但し、それらは1日で済ませてしまいましょう、理由は簡単で楽しくないからです。

楽しさ、自分の入力によって画面上のゲームキャラが動いた時の喜びは「Hello World!」の1万倍はあります。ぜひ手を動かしながら勉強しましょう。

 

絵も描けないし音楽についてもからっきしだけど大丈夫?

大丈夫です。

僕も絵はまったく描けませんし、音楽方面についても何のスキルもありません。

ここで必要になってくるのは妥協です。というか個人制作ゲームというのは妥協と挫折の連続です。最初に企画したゲーム、頭の中ではあんなに綺羅びやかに輝いていたゲームが、いざ完成してみると見るも無残な姿になっていたということは全く珍しくありません。というか、望んだゲームが手に入ることなど絶対にありません。

多くの個人開発者にとってグラフィックは最初に妥協を強いられる部分です、これはもう仕方ありません、結婚相手に望む希望年収みたいなものです。

世の中にはフリー素材でキャラ絵や背景画像を公開してくれている、いわば個人開発者にとっての神もいますし、ドット絵やボクセルという絵心のない人間でも比較的簡単にデザインできる便利なツールもあります。

音楽も、たまたま知り合いの新作ゲームをプレイしてみたら自分のゲームのエンディングBGMが便所のマップのBGMに使われていた、っていうくらいには多くの個人開発者がフリーBGMを使っていますから、ありがたくフリーBGMを使わせていただきましょう。

ちなみに多くのフリーBGMには商用禁止のものと商用OKのものがあります、アプリに広告をつけるならキチンと確認してから使わせてもらいましょう。

必要なソフトウェアは?(Unity,Cocos2d-x)

Unityです。

RPG風のフリーゲームを作るならRPGツクール、ノベルゲームを作るならそれに特化した制作ツールなどもありますが、ことモバイル向けゲームアプリに関してはもうUnity一択で良いと思います。

何かを始めようとする人の陥りがちなワナに「絶対ハズレを掴まされまい!」と、道具の選定にとにかく時間をかけて、肝心のやりたかった事を中々始められない、というものがありますが、ゲーム制作においてもそこはあるあるな話です。

僕がゲーム制作を始めた1年半前にはCocos2d-xという道具もそれなりに有望株で、僕も悩んだ挙句Unityを選んだのですが、その半年ほど後にUnityJapanの方とお会いする機会がありCocos2d-xの事を聞いてみた所、軽く鼻で笑われ、もはやまったく歯牙にもかけておられないといった感じでした。

まあこれは少し色眼鏡であったかもしれませんが(UnityJapanの方ごめんなさい)それくらいUnityは流行っているということです。

個人開発者、特にプログラミングに自信のない初心者にとってはツールの出来や使いやすさや完成度など、そのあたりは正直あまり関係ありません、流行っているかどうか、そして検索した時にGoogleが望んだ文字列を返してくれるかが全てです。

その点Unityは日本語情報も、日本語の書籍も多いですし、安心かと思います。

具体的な始め方は?

わざわざ書くほどのことでもないと思いますが、これは大きく二つあります。

一つは本を買うこと「unity 入門 本」で検索すると沢山出てくるので気に入ったものを買って読みましょう。殆どの場合、簡単なゲームを作りながらunityやC#を学ぶという構成になっているはずです。

もう一つは「unity 入門 チュートリアル」と検索する方法です。こちらもゲームを作りながら学べるチュートリアルが沢山出てくるはずです。気に入ったものをやってみましょう。

どの程度の制作期間が必要?

見積もりの5倍です。

1週間だと思ったら5週間、1ヶ月だと思ったら5ヶ月かかります。

ゲーム制作初心者がゲームを作る場合、まず上記で述べたように書籍やチュートリアルで簡単なゲームを作ります。ですから「さあこれから自分のゲームを作るぞ!」と考えた時、天秤の片側にはさっき作ったチュートリアルゲームが乗っかっていて、その釣り合いを見ながら「うーん、こういうゲームなら1ヶ月くらいかな?」と考えるわけです。

しかし残念なことにその目論見は大きくハズレます、なぜならチュートリアルゲームにはデバッグの必要がなかったからです。これは一度バラした電卓を組み直すのと、秋葉原でパーツを買ってきて電卓を一から組み立てるくらいの違いがあります。

ゲームを作り始めると買ってきたパーツが間違っていたことに気付き、また買い出しにいったり、そもそも何が必要か調べる事が頻繁におきます、もちろんゲーム制作初心者の方もそういった事をコミコミで「まあ、1ヶ月くらいかな?」と見積もるのですが、多くの場合、制作に入ってしばらくするとそれが甘い目算であったと気付きます。

ちなみにそういった事を考慮にいれず「まあ、1ヶ月くらいかな?」と見積もった場合は10ヶ月かかります。

一人でも作れる?

作れます。でも二人の方が嬉しいし、三人だともっと嬉しいです。

初心者のゲーム制作において一番重要なのはモチベーションです。ゲーム制作を開始しようと心に決めた時、あなたのモチベーションは坂を登り始めます、チュートリアルを一通りこなし、少しゲーム制作に自信がついてきます、想像より簡単だったと思うかもしれません、あなたは段々と自分だけのゲームが作れるような気がしてきます、そして頭の中に思い描きます、自分が本当に作りたかった、恋い焦がれたゲームの理想像を。

この瞬間がモチベーションの最高潮です、大体雲の上あたりにいるでしょう。

ここから一気に急降下します、坂を下っているというよりはHALO降下に近いです、これは別に冗談だったり、大げさな物言いをしているわけではありません。いざチュートリアルを終え自分の理想をゲーム企画に落とし込もうと思った時気づくからです。グラフィック部分で大きな妥協を強いられることを。

ですから、いざ実際にコードを書き始めた時の方がゲームを作ろうと決意した時よりもモチベーションが低いというのは別に珍しいことではありません。大体の場合「こんなショボグラのゲーム面白いのかな?」みたいな考えが頭をよぎります、そこに輪をかけて「作ってもどうせ誰も遊んでくれない」だとか「こんなものなら作らない方がマシ」という思考が降ってくるわけです。

ここで必要になってくるのが同好の士です、心強い友です。これは別にゲーム制作に限ったことではないですよね、誰かと一緒にやれば途中で挫ける可能性はぐんと下がります。

はっきり言って、初心者が二、三人集まった所で効率性はあがりません、むしろ一人で作ったほうがはやいかもしれません、しかしそれはモチベーションを維持出来ればの話です。自分は鉄の意志を貫けるという方以外は複数でやれる可能性があるなら複数で作ることをオススメします。ゲーム自体は別々のものを作り、進捗報告だけでも構いません。

もし、友人に特殊スキル持ち(絵が描けたり、作曲ができたり)の人物がいるなら、それは天啓です。自分の恵まれた環境を神に一言感謝してから友人をゲーム制作という地獄へいざないましょう。

ちなみに僕は一作目は友人と一緒に、二作目は友人と進捗報告しながら、三作目は進捗報告も殆どなしに作りましたが、二作目は一作目の倍、三作目は二作目の10倍の時間がかかりました。

どのくらいの費用が掛かる?

1万超~10万超です。

モバイルゲームの開発に掛かる費用は、あなたがAppleを愛しているか否かで大きく変わってきます。Appleというのはもちろん欠けたリンゴのあの企業のことです。

あなたがAppleを愛しているなら費用はおよそ1万5千円程です。これは「iOS Developer Program」と「Google Play Developer」という、モバイルゲームを各ストアで配信するために必要なデベロッパー登録に掛かる費用です。

あなたがAppleをあまり愛していないならかかる費用は上記に加えて、最低でも「MacMini」5万円「iPhone」5万円の系10万円がプラスされます。これはiOS用にゲームを作ろう(build)と思うとMacのPCが必要なこと、更にデバッグにもiPhoneが必要なことから掛かる経費です。

一応お金を掛けずに済む方法もありますし(「ios build 代行」 で検索しましょう)そもそも、これはゲームがほぼ完成してからの話です。Appleをあまり愛していないという方もあまり悲観せずにおきましょう。

というか、Androidでしかゲームを出していないという個人開発者の方も割といます。

どれくらい儲かるの?

まったく儲かりません。

これはホントに儲かりません。

数年前までは、大手のゲーム会社もまだネイティブアプリ市場には本格参入しておらず、個人開発者の天国のような時代があったらしく、その頃であれば大きめの車を買えるくらいには儲かったみたいですが、現在のモバイルゲーム市場は完全なレッドオーシャンです。

非常に競争の激しい市場です。大手のゲーム会社が企業生命を掛けてしのぎを削ってるのに個人開発者が割って入れるわけがありません。

もちろんゴク稀に天性の才能を発揮してヒットを飛ばす個人開発者もいますが、それは例外です。例外になれる自信のある方は儲けられるかもしれませんが、普通は無理です。

しかしほんの少しであっても、自分の作ったゲームアプリからの収益が口座に振り込まれると、それはそれは嬉しいものです。大人になってから貰えるお年玉程度に考えて気楽にいきましょう。

広告を貼りたい…

どんどん貼りましょう。

AdMobというGoogle子会社の広告企業が全世界に対応していてオススメです。ゲーム制作初心者ならこれ一本で良いと思います。

バナー、インタースティシャル、動画、更にリワード広告など色々、種類や用語がありますが、個人制作のゲームでは企画段階からそんなに難しく考えず出来上がってから組み込んでいっても全然良いと思います。

逆に「バナー広告をここに入れるからここのスペースは空けておこう」などと考えて、ゲームの幅が狭まると勿体なく思います。というかそもそもバナー広告はまったく儲からないのでハッキリとその考えは捨てましょう。

今は色々な仕組みがあるので、なんだかんだ広告を入れる場所はあります。取敢えず広告のことは考えずに作ってしまいましょう。

広告会社のほうも、アプリをリリースしてストアのランキングなどに一瞬でもアプリが載ると「スパムかな?」と思うくらい「自社アドネットワーク利用のお誘い」メールがいろんな企業からロシア企業の怪しいメールと一緒に届きますから、それから考えれば良いと思います。

誰も遊んでくれないか不安…

大丈夫です。どうせ誰も遊んでくれません。でも絶対に誰かが遊んでくれます。

僕の作ったゲームアプリにも100DL以下のものがあります、それでも0DLではありません、多くの人に遊んで欲しいという夢は中々叶わないかもしれませんが、絶対に誰かは遊んでくれますし、面白ければきっと素直に面白いと言ってくれます。

それに本当に面白いものが出来ればもっともっと多くの人が遊んでくれます、ツイッターSNSやブログで面白いという感想を書いてくれるかもしれません。めげずに頑張りましょう。

ちなみに、面白かった場合は面白いと言ってくれるのと同じようにツマラナイ場合はツマラナイと言われます。それはもう率直な言葉でボロクソに言われます。特にストアのレビューは酷いです。折角時間を掛けて作って、ストアで配信して、何が悲しくてこんな罵詈雑言を読まなければいけないんだと思うかもしれませんが、多くの場合ユーザーに悪気はありません、それが正直なゲームの感想であるだけです。耐えましょう。

どうやって宣伝すればいいの?

まずはtwitterやブログで宣伝しましょう、それにリリース前には予約サイトでも宣伝しましょう。

個人制作ゲームはハッキリ言って宣伝が全てです。最初にそれなりの人数がプレイしてくれないことには口コミもクソもありません。とにかくゲームが完成したら頑張って宣伝しましょう。

たまに、自分でもツマラナイと思ってるのに「面白いゲームです!」なんて言えない、絶対「ツマラナイ!」って言われるし宣伝ははばかられるという方がいますが、多くの場合、宣伝しなかったゲームは「ツマラナイ!」とも言われません。無です。本当に無です。前記した僕の100DL以下のゲームも完全な無でした。これほど悲しいことはありません。はばかったりおもんばかったりしてないで宣伝しましょう。

ツイッターもブログもやってないから宣伝できない…

これについてはなんとも言えません。というか僕もそうでした。

「なら、俺が自分のtwitterやブログで宣伝してやるから、URL送ってこい!」くらいカッコイイことを言ってみたいですが、僕もつい1週間程前にtwitterを始めたばかりのナメクジですし、ブログもこれが初投稿で何の影響力もないです。

取敢えずゲーム制作と平行してtwitterを初めてみたら良いと思います。

プレスリリースは送ったほうが良い?

送りましょう。個人開発者でもなんの気兼ねをすることもありません。

僕はメディア企業に勤めたことはないので伝聞でしか実情をしりませんが、興味のないプレスリリースメールは何の感情もなくゴミ箱に放り込むらしいので、別にクソゲーだったから着信拒否されるということもありません。

ちなみに僕はプレスリリースを送って記事にして貰えたことは一度もありません。打率ゼロ、完全無視されています。但し、目ざといゲーム系メディアの方は結構、個人開発のゲームなんかもチェックしているらしく、リリース後、プレスリリースとは関係なく記事を書いて頂けた事は何度かあります。

ちなみに当然ですが、記事になるといっても何か連絡なんかがあるわけではありません。

その他の細かいこと

アイコンと紹介イメージは頑張って作ろう

紹介イメージやロゴの見た目は個人的に結構大事だと思います。ゲームをDLインストールするユーザーはそのゲームが個人開発かどうかなんて一切気にしていません。

なので、あからさまに低クオリティな紹介イメージだとその時点でユーザーのクソゲーフィルターに引っかかり網膜には映っていても脳には届いていないということになりかねません。

逆に紹介イメージとロゴだけでも頑張って普通のゲームっぽい水準まで上げられれば、ユーザーも一応ゲームとして認識してくれます。

ゲームには直接関係ない部分なのでやる気が出ないかもしれませんが、紹介イメージやロゴ、アイコンも頑張ってクオリティアップしてみましょう。

アプリリリース後、DL数が伸びなくても落ち込まない

 個人開発ゲームに限らず大手のゲームでもそうだと思いますが、DL数が一番伸びるのはリリース初日から数日であとは下り坂です。大手のゲームならCMやコラボ等々、色々な施策でDL数がまた伸びることがあるのでしょうが、個人開発ゲームでは大抵の場合は一度沈むともう上がってきません。

しかしチャンスはあります。例えば上述したゲーム系メディアの記事であったり有名youtuberの実況であったりがそれです。

ちなみに、僕が最近リリースした「7年後で待ってる」はそのどちらのチャンスもあったにも関わらず、おそらくカジュアル系ではなかったためだと思いますが全然DL数が伸びませんでした。しかしGooglePlayの急上昇ランキングにのったお陰でそこそこランキングの上の方まで行けるということもありました。

何がきっかけでDL数が伸びるかは分かりません。期待せずに待っていましょう。

最後に

以上、昔の自分に伝えられるなら伝えたいことを書いてみました。

おそらくこのブログのこの記事を読んでくれる方は数人くらいだと思いますが、これを読んでゲームを作り始めたという人がいたらとても嬉しいです。

*1:ゲームを作り出す前、webサイトを作ろうとしていたので厳密にはゲーム制作開始時に全くの未経験だったというわけではありません